ルーツ探訪 2005年
10月

★ 藤七温泉(とうしちおんせん)
岩手県


●地球の営みが織りなす“火山の博物館”。副産物としての温泉も豊富。

 山々があでやかな錦に染まる季節がやってきました。みちのくの紅葉、その見どころのひとつに挙げられるのが、東北を代表する山岳地帯「十和田八幡平国立公園」です。青森・秋田・岩手の県境に広がる約8万5千ヘクタールは、十和田湖、奥入瀬渓流、八甲田山系を含む「十和田・八甲田地域(約4万5千ヘクタール)」と、八幡平、岩手山、駒ケ岳などから成る「八幡平地域」とに大きく分けられ、管理されています。いずれの地域も、手付かずの雄大な森林景観を有しており、全国から多くの人が訪れています。  
今回の舞台は八幡平。岩手と秋田両県にまたがる約4万ヘクタールには、八幡平、大深岳、岩手山、駒ケ岳、焼山、茶臼岳、畚岳など40もの火山が連なっています。これらの火山はアスピーテ(楯状火山:八幡平)、コニーデ(成層火山:岩手山、駒ケ岳)、トロイデ(釣鐘状火山:焼山、畚岳)、アスピトロイデ(楯状釣鐘状火山:茶臼岳)など非常に種類に富み、活動の痕跡である火山湖や溶岩流なども見られることから、「火山の博物館」と呼ばれています。岩手山、焼山など、今なお活動を続ける山もあります。もちろん副産物としての出で湯に恵まれる「温泉の宝庫」であり、後生掛、蒸ノ湯、玉川、乳頭、松川、藤七、大沼、トロコなど、泉質もさまざまな温泉が、湯治場としての歴史を刻んできました。

●東北最高峰の雲上の秘湯。大自然を一望しながらの湯浴みは最高。

 ブナやダケカンバ、アオモリトドマツが広がる樹海の向こうには、“南部片富士”と呼ばれる県内最高峰の岩手山、そして茶臼岳や遠く駒ケ岳の山容が望めます。まさに八幡平の景観を独り占めする絶好のロケーション! ここは標高1400メートル、東北一の高さにある温泉です。雲上の湯として知られる藤七温泉彩雲荘は、八幡平頂上付近の一軒宿。素朴な山小屋風の建物は、山の宿の雰囲気十分。お風呂は内湯・露天風呂すべての浴槽が総木造りで、やさしく肌になじむ感触が、癒しの効果を増してくれます。お湯は源泉100%の掛け流し、少し熱めの硫黄泉は、特に婦人病によく効くそうで「子宝の湯」と呼ばれています。  
 平安の昔、朝廷から遣わされてやってきた坂上田村麻呂が、あまりにも美しい景色に心打たれ、八幡大菩薩に感謝をこめて名づけたという八幡平。本格的な登山道から手軽に楽しめるトレッキングコースまで整備されているので、温泉にゆっくり滞在しながら、新緑・高山植物・紅葉・・・と季節の息吹を満喫してはいかが? 山歩きの疲れを癒してくれるのは、高山植物の可憐な姿。ミズバショウ、チングルマ、ワタスゲ、ニッコウキスゲ、エゾオヤマリンドウ・・・と、雪解けから夏まで、リレーのように咲き誇ります。



温泉INFORMATION

泉質は単純硫黄泉、泉温91℃、効能は、神経痛・慢性消化器病・糖尿病・高血圧症・皮膚病・動脈硬化症・婦人病・筋肉症・うちみ・冷え症など。営業期間は4月上旬〜10月下旬。立ち寄り入浴も可能。車で東北自動車道・松尾八幡平ICから県道45号を経て県道23号(八幡平アスピーテライン)へ。見返峠から県道318号(八幡平樹海ライン)を2q。公共交通機関はJR盛岡駅前から岩手県北バス・松川温泉行き乗車、東八幡平交通センターで八幡平蓬莱境行きに乗り換え、藤七温泉下車すぐ。約2時間20分。問い合わせ:藤七温泉彩雲荘TEL090-1495-0950



参考文献・サイト
藤七温泉彩雲荘 http://www.toshichi.com/
(財)岩手県観光協会 http://www.iwatetabi.jp/
八幡平市役所 http://www.city.hachimantai.lg.jp/kankou/index.html
十和田八幡平国立公園 http://www.sizenken.biodic.go.jp/park/cgi-bin/page_np.cgi?park=towada
(社)松尾八幡平観光協会 http://www.hachimantai.or.jp/


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