ルーツ探訪 2005年
7月

★ 高湯温泉(たかゆおんせん)
福島県


●福島盆地を見晴らす高原の湯は、江戸時代からの人気の湯治場。

 吾妻小富士(1707m)の東麓、磐梯吾妻スカイラインの玄関口に位置する「高湯温泉」は、その名の通り標高750mに湧く湯。福島盆地を見下ろす高原は、盛夏もジメジメとした暑さとは無縁です。古くは信夫高湯と呼ばれ、白布高湯(山形県米沢市、白布温泉)、蔵王高湯(山形県山形市、蔵王温泉)とともに「奥州三高湯」に数えられてきました。福島市街から車でわずか30分という場所にもかかわらず、昔ながらの湯治場の風情を随所に残す名湯です。  
 開湯は慶長年間(1596-1615)、山中に分け入った狩人が、湯花を浮かばせる沢辺を発見したのが始まりと伝えられています。現在のような旅館業が発達していなかった江戸時代には、近郷近在の集落ごとに湯治小屋を所有していたようです。その頃の利用者は、年間延べ1万2千人とされ、湯銭(税金)を納めたことを示す文献から推し量ることができます。また、その湯銭を見逃してくれた(!)代官を敬った碑が薬師堂に建てられているなど、温泉の歴史をうかがい知ることができます。しかし、源泉が洪水に見舞われてのち、しばらくの間、湯治場の灯りは消えてしまいます。高湯温泉に賑やかさが戻ってくるのは、1800年代後半から。硫黄を含んだ乳白色の湯は、その薬効の高さから、やがて多くの人に知られるようになります。源泉の数は10カ所、湯温、湯の色、湯花の量など、それぞれが微妙に異なる特徴を持っており、各施設では引き湯をし、あふれるままにしています。温泉ファンにはおなじみの「掛け流し方式」です。したがって、湯船も地中からの恵みに寄り添う大きさ、巨大風呂はここには存在しません。

●絶景の続くドライビングコース、草木も生えない不毛の地に驚嘆。

 温泉とともにぜひ堪能していただきたいのが、高湯温泉から土湯峠までの28.8qを結ぶ「磐梯吾妻スカイライン(11月中旬〜翌4月中旬は閉鎖)」です。平均標高1350m、吾妻連峰を縫うように走る山岳自動車道は、昭和62年、建設省(当時)の「日本の道100選」にも選ばれています。連続する坂やヘアピンカーブを注意してのぼっていくと、芥川賞作家・井上靖氏に「吾妻八景」と名付けられた絶景があらわれます。深い渓谷美をみせる「つばくろ谷」、天狗が舞い遊んだという故事にちなんだ「天狗の庭」、草木も生えない荒涼とした不毛の景観「一切経山(いっさいきょうさん)(1949m)」、そしてスカイラインほぼ半ばに位置する「浄土平」が最大の見どころ。車を降り、歩くこと10分足らずで、吾妻小富士の火口を目の当たりにすることができます。巨大なアリ地獄といった姿の“お鉢”の外周は1.5q、徒歩で30〜40分でめぐることができ、天気の良い日は安達太良山(1700m)や福島盆地、遠く蔵王の山々を望めます。磐梯吾妻スカイラインは四季折々に豊かな自然の息吹を満喫できますが、とりわけ紅葉の季節は見事。この時期の温泉の予約はお早めに。



温泉INFORMATION

泉質は酸性・含硫黄(硫化水素型)−アルミニウム・カルシウム硫酸塩温泉(硫黄泉)。効能は、高血圧症、動脈硬化症、末梢循環障害、リウマチ、糖尿病、慢性中毒症、にきび、しもやけ、やけど、切り傷、婦人病、不妊症、水虫、あせも、胃腸病、神経痛、手足多汗症、アトピー性皮膚炎など。宿泊施設は、ホテル、旅館、公共宿舎合わせて11軒ほど。車で東北自動車道・福島西ICから国道115号からフルーツライン、県道福島吾妻裏磐梯線をさかのぼること約16q。バスは福島交通利用、福島駅西口から約40分。問い合わせ: 高湯温泉観光協会TEL024-591-1125



参考文献・サイト
車で行ける名湯秘湯 東北編/JAF出版社
源泉の温泉宿(北海道・東北編)/JAF出版社
JTBの旅ノート Plus秘湯の宿/JTB
からだにいい「現代」湯治の宿/実業之日本社
高湯温泉観光協会 http://www.naf.co.jp/azumatakayu/welcome.stm


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