ルーツ探訪 2005年
4月

★ 夏油温泉(げとうおんせん)
岩手県北上市和賀町


●夏油川沿いに点在する露天風呂。それぞれが異なる源泉を持つ温泉天国。

 江戸時代、全国温泉番付で西の紀州・本宮温泉と並んで、東の大関(横綱がなかった頃の最高位)にランキングされたといわれる夏油温泉。「げとう」という何とも不思議な名は、アイヌ語の「グット・オ」(崖のあるところ)を語源としているそうです。また、冬は豪雪にはばまれ、夏しか利用できなかったことから「夏湯」とよばれ、さらに夏の陽に揺れる湯が油のように見えたことから「夏油」になったとも伝えられます。今から850年前、マタギ(古い伝統と独特の山岳信仰を継承してきた猟師の集団)のひとりが、手負いの白猿を追ったところ、湯で癒している姿を発見したのが開湯の由来とされています。  
 岩手、宮城、秋田、山形の4県にまたがる広大な山岳地帯、栗駒国定公園。ここは、焼石岳一帯、栗駒山一帯、鬼首カルデラと、大きく3つの山岳群に分けられますが、もっとも北の焼石岳に連なる夏油三山(駒ヶ岳、経塚山、牛形山)に囲まれた山懐に湯煙をたなびかせるのが夏油温泉。標高700m、手つかずのブナ林にすっぽりと包まれ、新緑から万緑、そして紅葉と豊かに濃い季節の息吹を感じることができます。少し足を伸ばせば、さまざまな高山植物がお出迎え。もちろん自然だけではなく、温泉の素晴らしさも随一。「温泉天国」の異名をとる夏油には、夏油川沿いに6つの露天風呂が点在し、すべて異なる自然湧出の源泉(かけ流し)と効能を持っています。

●浴衣姿でタオル片手に“はしご湯”。くれぐれも湯あたりにはご注意を。

  旅館や自炊の宿舎、食堂、生活雑貨売店が立ち並ぶ通りをそぞろ歩きつつ、ゆっくりと「はしご湯」するのが夏油流入浴法。自慢の露天風呂をご紹介していきましょう。まずは夏油を代表する「大湯」、白猿が傷を癒していたという湯で、1日に7回湯の色が変わるといわれています。効能は神経痛・リュウマチ・皮膚炎・外傷。女性専用(男性タイムあります)の「滝の湯」は、硫黄を含む泉質で皮膚病・外傷に効きます。開放感タップリの「疝気(せんき)の湯」は小さめの岩風呂、婦人病・痔に効用アリ。広々とした湯船の「真湯(しんゆ)」の効能は、胃腸病・ぜんそく・結核・虚弱児童です。真湯から対岸へ木橋を渡ったところにある「女(め)の湯」は、“目の湯”ともいい、眼病に効果があるそうです。以上は、元湯夏油所有の温泉。夏油温泉観光ホテルには「新太郎の湯」があり、神経痛、腹筋痛、関節痛に効能があります。滝の湯を除いて混浴ですが、女性専用の時間が設けられているので安心です(疝気の湯、真湯、新太郎の湯は終日混浴)。そのほか、各宿泊施設専用の内湯もあります。泉質、温度、雰囲気・・・とそれぞれが味わい深い個性を持つまさに温泉天国、欲張って湯あたりをしないよう、休息と水分補給を心がけて、ゆっくりと楽しんでください。



温泉INFORMATION

泉質は、カルシウム−ナトリウム−硫酸塩、塩化物泉ほか。効能は、本文を参照。営業期間は5月上旬から11月中旬、冬期間は休業。アクセスは、車なら東北自動車道・北上江釣子I.Cから約45分。公共交通機関は、JR北上駅から岩手県交通バス夏油温泉行きで約1時間、終点下車、1日3往復運行。
問い合わせ:元湯夏油 090-5834-5151、国民宿舎夏油山荘 090-5834-5152、夏油温泉観光ホテル 090-5834-5139、昭和館 090-5834-5187、北上観光協会 0197-65-0300



参考文献・サイト
からだにいい「現代」湯治の宿/竹村節子 実業之日本社
車で行ける名湯秘湯 東北編/JAF出版社

夏油温泉 http://mizuki.sakura.ne.jp/~geto/
夏油温泉観光ホテル http://www.misuikan.com/geto/pcindex.htm
北上観光協会 http://www.kitakami.ne.jp/%7Eksa/index.html

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