ルーツ探訪 2005年
3月

★ 峩々温泉(ががおんせん)
宮城県柴田郡川崎町


●ふつふつと湯は湧き、ゆっくりと時間は流れる・・・静けさに満ちる温泉。

 気の置けない仲間を伴って温泉へ。ひと風呂浴びた後は、宴席がお待ちかね。湯で温まった体にアルコールが回れば、気分も高揚、歌のひとつも飛び出し、ついにはドンチャン騒ぎへ・・・そんな温泉の過ごし方に異を唱え、心身を休めるという温泉本来のあり方を貫き通してきたのが、峩々温泉です。よって、マージャン、カラオケ、温泉旅館には付き物の宴会さえも、ここで行われるということはありません。右肩上がりの経済成長で勢いづいていた時代には、“かなり変わった”経営方針と揶揄されることもあったといいます。しかし、日々ストレスにさらされ、静かで落ち着ける環境下での「癒し」や「再生」が求められる昨今、多くの人が峩々温泉に、温泉としてのあるべき姿を見ています。  
 宮城県の南西部、国定公園として指定される蔵王連峰の中腹、標高850mの濁川沿いに湯煙をたなびかせる峩々温泉は、一軒宿。峩々とは「けわしくそびえ立つ」という意味であり、荒々しい山肌を見せる刈田岳に、その名の由来を尋ねることができます。嘉永年間(1848−1853)、現在の山形県に住む猟師・六冶(ろくじ)が狩りの最中に発見、手負いの鹿が湯浴みをしていたことから「鹿の湯」と呼ばれ、里人に親しまれてきたといわれています。そして明治2(1869)年、勝海舟や木戸孝允らの知遇を得て、刈田岳での硫黄採掘を行っていた群馬出身の竹内時保によって、峩々温泉が開かれることとなります。

●寝そべりながら、湯浴み+飲泉。胃腸を養生する峩々ならではの入浴法。

  峩々温泉は、大分の湯平(ゆのひら)、群馬の四万(しま)とともに「胃腸の三名湯」として知られています。大浴場には、ゆっくり体を温めるための「ぬる湯」とかけ湯を行うための「あつ湯」があります。このかけ湯こそが、峩々温泉独特の湯治法。浴槽のまわりに置かれた木の枕に仰向けに横たわって、竹筒に湯を汲み、患部である胃や腸にかけていきます。あつ湯だけに、温度設定はかなり高めの45度前後。飛び込みは厳禁です。ゆっくりと寝そべりながら、体に湯を染み込ませるというのは、他の温泉ではなかなか叶わない入浴法です。湯からあがった後は、冷たいビール!ではなく、温泉水を飲む「飲泉」を行うのが峩々流。こうして弱った胃腸を、内と外から癒していくのです。
  峩々温泉が位置する蔵王一帯は、景勝地の宝庫です。ちなみに「蔵王」という名の山はなく、宮城と山形にまたがって連なる雁戸山から不忘山までの火山群を総称しています。当地の代表的な見どころといえば、神秘的なエメラルドグリーンの火口湖「御釜」。太陽光線の加減でさまざまな色を変えることから「五色沼」の愛称があります。御釜からエコーラインで宮城方面へおりていくと、途中、コマクサの群落で知られる「駒草平」、その昔、山岳仏教の修行場だった荒涼とした岩原「賽の磧(さいのかわら)」、不動滝、三階滝、二つの滝が一度に望める「滝見台」などがあります。冬は迫力ある“アイス・モンスター”「樹氷群」がスキーヤーを迎えます。温泉で軽くなった足取りで、蔵王の自然美を見つけに出掛けてみたいものです。



温泉INFORMATION

泉質はナトリウム・カルシウム・炭酸水素塩・硫酸塩泉。効能は、リューマチ、慢性胃炎、胃下垂、胃・十二指腸潰瘍、肝臓、胆道疾患、痛風など。通常料金のほかに長期滞在者向けのプランもある。
アクセスは、車なら東北自動車道・白石ICから国道457号(遠刈田温泉方面へ)、蔵王エコーライン(県道12号線)経由で約50分。公共交通機関は、遠刈田温泉バスターミナルから送迎あり(要予約)。
問い合わせ:峩々温泉TEL0224-87-2021



参考文献・サイト
お湯で選んだ“源泉”の宿/松田忠徳 弘済出版社
車で行ける名湯秘湯 東北編/JAF出版社

峩々温泉 http://www.gagaonsen.com/
蔵王町観光協会 http://www.zao-machi.com/topic_frame.html
蔵王温泉観光協会 http://www.zao-spa.or.jp/w_index.html

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