ルーツ探訪 2004年
11月

★ 産土講(うぶすなこう)裸祭り
青森県岩崎村/武甕槌(たけみかづち)神社、弁天宮


●世界遺産・白神山地に抱かれる村は、ロマンあふれるサンタの国。

 1993(平成5)年、世界遺産(自然遺産)に登録された白神山地の主峰・白神岳(1235m)の玄関口としても知られる岩崎村は、豊かな自然の恩恵に恵まれる地。 日本海に沈む美しい夕陽が見られることから「茜の道」と呼ばれる、延長32kmにおよぶ海岸線や、「青池」や「沸壺の池」など神秘的な色をたたえる大小33の湖沼群からなる津軽国定公園「十二湖」、アメリカのグランドキャニオンを思わせる浸食崩壊した白い山肌の「日本キャニオン」などが、訪れる人を魅了しています。 また1990(平成2)年6月、サンタクロースの故郷といわれているフィンランド・ラヌア郡と姉妹都市協定を結んだのを機に、白神岳のふもとに「サンタランド」を建設。一年を通じて、クリスマスの雰囲気を満喫できる夢いっぱいのサンタクロース・ワールドとして人気を集めています。 毎年12月半ばには、はるばる北欧の国からサンタクロースとトント(妖精)を招いて「ヨールプッキ(フィンランド語でサンタクロースの意)まつり」を開催。2004年は12月11(土)、12(日)に予定されています。 こうして新しいお祭りが生み出される一方、脈々と継がれる昔ながらの祭事があります。



●山なら豊作、海なら大漁。一年の終わりに、来年の恵みを占う。

 岩崎村における産土信仰の特徴としては、山里を生業(なりわい)とする鎮守として武甕槌神社が、そして漁業や船運をつかさどるお宮として弁天神社が置かれており、それが複合している点が挙げられます。江戸初期の創建とされる武甕槌神社では、当時より産土講が行われていたとみられており、長い間、45歳までの青年団によって取り仕切られていました。1974(昭和49)年には、継承に力を入れようと「花上げ踊り産土講保存会」が結成され、今では年齢に関係なく参加できるようになりました。ただし、例外なのは女性。これは両神社の祭神が、いずれも女性だからという理由によるものです。
 さて、祭りの約1週間前から、こつこつと製作してきた注連縄や注連俵、コモデ。当日の朝は、これらに炭木やみかんなどをつけ、献台(けんだい)という巨大縄をつくります。その重さは約40kg。お神酒や米、塩、昆布、魚や野菜、餅を神前に供えてお祓いを済ませると、極寒のなか男衆は裸になり、神具を担ぎ、地区のはずれにある2つの神社まで参詣します。山と海の分岐点に到達すると、2団体に分かれ、合図とともに献台、注連俵を担いだまま、武甕槌神社、弁天宮へと駆け出します。それぞれの鳥居に献台と俵をかけ、先に帰ってきたほうが勝ち。すなわち「山(が勝ち)なら豊作、海(が勝ち)なら大漁」というわけです。今年一年の無事に感謝し、来年の恵みを占う産土講が終われば、いよいよ新しい年がやってきます。



お祭りINFORMATION

●「花上げ踊り産土講保存会」による花上げ踊りとは、岩崎村で350年以上も伝承されている郷土芸能。五穀豊穣を願い、赤襦袢にたすきをかけ、白鉢巻白足袋で、笛太鼓のお囃子にあわせて掛け声勇ましく舞われる。毎年7月15日に行われる武甕槌神社の神楽祭りでご奉納されるが、近年では中学生による保存活動も盛んである。
祭りの問い合わせ:岩崎村産業観光課 0173-77-2111 (代)、岩崎村観光協会 0173-77-2037



参考文献・サイト
東北お祭り紀行/重森洋志 無明舎出版
青森県岩崎村ふるさと体験サイト
http://iwasaki.mt-shirakami.jp/

←2004年10月号へ [ルーツ探訪]に戻る 2004年12月号へ→