ルーツ探訪 2004年
1月

★ 七日堂裸まいり
福満虚空蔵尊 圓蔵寺(ふくまんこくぞうそん えんぞうじ)/福島県柳津町


●ご本尊は弘法大師の作。人々の信仰を集める霊験あらたかな古刹。

 会津若松市から西へ約25q。「いで湯と信仰とスポーツの里」を掲げる柳津は、圓蔵寺の門前町として栄えてきた歴史ある街。圓蔵寺は大同2(807)年、法相宗の名僧徳一大師によって開山された古刹で、千葉県天津小湊町の能満虚空蔵菩薩、茨城県東海村の大満虚空蔵菩薩とともに、日本三大虚空蔵尊のひとつとされています。本尊の福満虚空蔵菩薩は弘法大師の作によるものと伝えられ、「柳津の虚空蔵さま」として人々の篤い信仰を集めています。縁起によれば、弘法大師が修行を終えて唐から帰る途中、ある高僧より霊木を授かり、それを海に流したところ三片に分かれ、現在、虚空蔵が祀られる三地に流れ着いたのだそうです。海から遠い柳津には、白蛇が運んできたとの伝承もあります。
 また、会津地方の伝統民芸品として有名な「赤べこ」は、圓蔵寺の建立に由来するといわれています。本堂の菊光堂には、けやき八角の立柱が56本も使われていますが、建っている場所は只見川を臨む絶壁。当時、木材の運搬に難儀していたところ、どこからともなく一頭の赤毛牛〔赤べこ〕が現れ、それは見事な働きをしたといいます。牛は完成とともに姿を消しますが、これは御仏のご加護に違いないと“撫牛(なでうし)”にして境内に祀られ、丑(うし)歳の守り本尊となりました。



●めざすは鰐口。裸の男たちがもみ合いながら綱をよじ登る、勇壮な奇祭。

 凍てつくような寒さの1月7日夜、菊光堂からは人々の歓声と、ワッショイと威勢のよい掛け声が聞こえてきます。下帯(したおび)ひとつの男たちがもみ合いながら、大鰐口(おおわにぐち)をめざして打ち綱をよじ登る奇祭・七日堂裸まいりの始まりです。その昔、疫病(伝染病)が流行して、村人たちが困り果てていた時、“前を流れる只見川の龍宮から宝珠の玉を奪い、菩薩様に献上せよ”とのお告げがあります。弥生姫が苦労の末、手に入れお供えすると、たちまちのうちに悪疫は退散。
 しかし龍神が玉を奪い返しにやってきたため、村人たちは渡してなるものかと一致団結し、下帯ひとつの裸になって、寺に集まり大声で騒いだところ、龍神はその勢いに押され、あきらめて退散した・・・という伝説に基づき、寺院創建の頃から休むことなく続けられている福島十大祭りのひとつです。参加者のなかには、裸の体に「○○祈願」「○校合格」などと大書する人もいて、それらの願い事を見るのも一興です。無事、鰐口にたどり着く事ができれば、一年間、病気をせず健康に過ごせるといわれています。



お祭りINFORMATION

 毎年1月7日午後8時半の鐘楼の一番鐘を合図にスタート、同10時頃まで。
翌午前4時、初御開帳。祭りへの参加は自由。
旅行者は町民センターで、下帯に着替えることができる。
参加者には祭りの名入り手拭と牛王(ごおう)の矢が授けられる。

問い合わせ:
柳津町役場  0241-42-2111
柳津観光協会 0241-42-2346
町民センター 0241-42-2302



参考文献・サイト
東北お祭り紀行/重森洋志 無明舎出版
ふくしまの祭りと民俗芸能/懸田弘訓 歴史春秋社
福島県柳津町役場 http://www.town.yanaizu.fukushima.jp/

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