ルーツ探訪 2003年
7月

★ 日本最高気温の記録(40.8℃)
山形県山形市


●暑いあつ〜い北の国。かき氷を溶かす猛暑の原因はフェーン現象

 アイスクリームよりも、かき氷のキーンとした冷たさが恋しくなったら、いよいよ夏も本番。かき氷の歴史は古く、初めてその記述がみられるのは平安時代の「枕草子」。氷を小刀で削り、新しい銀の椀に入れ、甘葛(あまづら:つるあまちゃを煮つめて作った甘味料)をかけたものを、清少納言は「あてなるもの」、つまり高貴で優雅なもののひとつに挙げています。7月25日は「かき氷の日」。こちらは、清少納言とは関係なく、1933(昭和8)年のこの日、日本において観測史上最も高い気温40.8℃を記録したことにちなんで、日本かき氷協会が定めたもの。日本で最も暑い場所・・・それは意外にも、北国・山形なのでした。
 山形で最高気温?と不思議に思われる方も多いかもしれませんね。原因は「フェーン現象」。これは、山脈を越えた風が、乾燥した高温の風となって、風下の平野に吹きおりる現象です。もし少し詳しく説明すると、風が山腹を吹きあがるときは、100メートルに付き約0.5℃気温が下がり、途中雲をつくり、雨を降らせたりしますが、山頂を越えて吹きおろす時は100メートルに付き、約1℃ずつ上昇し、乾熱風(フェーン)となるのです。たとえば、24℃の風が800メートルの山を越えるとき、山頂では20℃になり、28℃の風になってふもとに吹きつける計算になります。山形市の場合は、太平洋側から吹く冷たく湿った風が、奥羽山脈を越えることで、乾燥した熱い空気となって下りてくるのです。



●きびしい盆地型気候が、お米やくだものをおいしく豊かに稔らせます

 県土面積のうち70%以上を森林が占める山形県では、夏には炎暑に見舞われることも多いのですが、一方で、こうした盆地特有の気候から大きな恵みを受けています。日盛りの酷暑から一転して、夜はスーッと涼しくなるのが盆地の特徴。事実、7月から8月にかけての山形市では、昼夜の気温差が10℃前後もあります。実はこれ、農作物をおいしくする条件のひとつ。昼間は太陽の光をいっぱいに浴びて盛んに光合成を行い、涼しい夜は養分を消耗することなく、おいしさをじっくりと蓄えるというワケです。
 くだもの王国と呼ばれる山形では、さくらんぼ、西洋なしの生産量がダントツの日本一、もも、ぶとう、りんご、スイカ、メロンも全国屈指の産地として有名です。そして、奥羽山脈が屏風のような役割をして、東北地方の冷害の原因ともなる「やませ」をさえぎってくれるため、稲作にも最適の土地柄となっています。平成4年にデビューした山形米「はえぬき」は、平成6年から9年連続して、(財)日本穀物検定協会の食味評価で「特A」にランキングされています。平成15年米は、全国133種のうち、特Aに選ばれたのは12種といいますから、"新人"ながら堂々と、日本を代表するおいしいお米の仲間入りを果たしています。



参考文献・サイト
ローカル気象学/浅井冨雄著 東京大学出版会
四季の気象と暮らしの事典/朝倉正、工藤宣、西川勢津子他著 朝日新聞社
日本を楽しむ暮らしの歳時記・夏号/平凡社
JA全農山形 http://www.zennoh-yamagata.or.jp/

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