ルーツ探訪 2003年
6月

★ 日本一、人口の多い村
岩手県滝沢村


●岩手山に抱かれる緑豊かな地は、宮沢賢治も愛した、人口日本一の村。

 標高2,038m、山頂から東に流れるように裾野を引く優美な姿から「南部片富士」の名を持つ岩手山。 そのふもとに広がる滝沢村は、日本一人口の多い村。宮沢賢治が幾たびとなく訪れ、多くの作品の舞台となった場所としても知られています。 総面積182平方キロメートルの自然豊かな土地には51,978人(平成15年3月末現在)が住んでいます。主な産業は稲・野菜・酪農等を主体とした都市近郊農業で、昭和57(1982)年には、姥屋敷地区が豊かな村づくり全国表彰天皇杯を受賞、平成元(1989)年4月1日、村制100周年を迎えています。また平成12(2000)年には、自治体としては全国で初めてISO14001、9001を同時取得し、行政経営への新しい取り組みにも積極的です。
 滝沢村のみずみずしい稲が、初夏のさわやかな風にそよぐ頃、チャグチャグチャグと軽やかな鈴の音が聞こえてきます。国の無形民俗文化財に指定されている「チャグチャグ馬コ」です。



●自慢の愛馬を、華やかな衣装で飾り立てて・・・馬が主役のゆかしい祭り。

 奈良時代から良馬の産地として全国に聞こえた岩手県。馬が働き手として人々と深いかかわりを持つようになるのは、農耕の技術が伝わった江戸時代半ばから。馬を家族同様とみなしてきたこの地方では、独特の「南部曲り家」を生み出しました。ひとつ屋根の下、土間をへだてて人家と馬屋が鍵型に続いている住居形態に、馬に寄せる愛情の深さを垣間見ることができます。
 滝沢村の「蒼前(そうぜん)神社」は、古くから馬の守り神として篤い信仰を集めていました。 やがて端午の節句に、農耕で疲れた馬を癒すため、お参りをする風習が生まれます。 たくさんの馬が集まるようになると、馬具にも趣向を凝らすようになり、なかには南部 家から拝領した「小荷駄装束(こにだしょうぞく)」で飾り立てる馬もでてきました。 この小荷駄とは、参勤交代で江戸に上る大名が行列の後尾に従えた輸送隊のことで、馬はしきたりに従って豪華な衣装をまといました。祭りの名の由来となっているのは、この装束につけられていた鈴の音で、平成8(1996)年、環境省の「残したい日本の音風景100選」に選ばれています。 古くから培われてきた愛馬信仰と大名行列風俗が混じり合ったものが、「チャグチャグ馬コ」の原形のようです。昭和5(1930)年、秩父宮殿下ご来県の折、盛岡八幡宮で馬ぞろいをしてお目にかけたことをきっかけに、蒼前神社から八幡宮までの15kmを行進する祭りとなりました。



◆チャグチャグ馬コ

毎年6月第2土曜日に開催される(平成15年6月14日)。 午前9時30分滝沢村の蒼前神社出発、午後1時55分盛岡八幡宮到着予定。


参考文献・サイト
岩手県の歴史散歩/山川出版社
岩手県の不思議事典/金野靜一、七宮 三、駒井健 編 新人物往来
岩手県滝沢村 http://www.vill.takizawa.iwate.jp

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