ルーツ探訪 2003年
3月

★ マガン飛来数日本一(日本最大の越冬地)
宮城県築館町・若柳町・迫町/伊豆沼・内沼


● シベリア・伊豆沼間4000qをまっすぐ迷いなく。カーナビをしのぐ優れた能力。

 寒い日が続きます。身も心も凍ってしまいそうな時は、あったかい温泉につかって、のんびりするのが一番! もしあなたが東北地方の温泉地へ出掛けたならば、おみやげ屋さんの店先で愛らしい「伝統こけし」(以下こけし)の歓迎を受けることでしょう。人気が高く、熱心な蒐集の的になり、時に研究の対象ともなるこけしは、郷土玩具の王者といわれています。
 マガンは秋、シベリアの大地が凍るため水や食べ物のあるところにやってきます(秋の渡り)。そして春になると、子育てのために安全で広い場所へ移っていくのです(春の渡り)。マガンに限らず渡り鳥は、どうして迷子にならないのか?と思ったことはありませんか。伊豆沼・内沼から繁殖地であるシベリア・チュコト地方までは約4000q。1994年2月、伊豆沼のマガンに人工衛星用位置送信機を取り付けて、春の渡りの経路を調べた結果、越冬地から八郎潟(秋田県)、ウトナイ湖、宮島沼(いずれも北海道)を経由して、シベリアまで"ほぼ直線に"渡ることがわかりました。そのうえ、2日間で2000qをノンストップで飛び続けるという驚異的なデータも得られました。渡り鳥は、体内時計で時間を、太陽や星で方向を知るといいます。さらに、コンパスや六分儀のような能力を両方持っていて、最短距離を効率よく渡ってくるとみられています。昨今人気のカー・ナビゲーションもびっくりですね。



● 水鳥をはじめとする多くの生物たちの楽園、「湿地」を未来へ伝え継ぐために。

 1985(昭和60)年、伊豆沼・内沼559haは「ラムサール条約」登録湿地となりました。国内では、北海道・釧路湿原(1980年)に次ぐ国内2番目の指定。「ラムサール条約」とは、1971年2月、イランのラムサールで開かれた「湿地及び水鳥の保全のための国際会議」において採択された条約です。開催地にちなんだ名がつけられていますが、正式には「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」といいます。この条約の締約国となるには、その国にある湿地を1カ所以上指定・登録することが義務づけられています。第1回の会議に参加した国はわずか18カ国でしたが、2002年には134カ国が締約国となり、1,229の湿地が当条約に指定されています。日本は現在、13の登録湿地を有しています。
 ラムサール条約による湿地保全のあり方は「賢明な利用Wise Use」という理念を基本とします。これは、湿地の姿を変えることなく未来に伝え継ぐ一方で、昔から受けてきた"恵み"をかしこく利用していこうというものです。伝統的な狩猟や漁業はもちろん、適正に管理された観光活用もまた賢明な利用と考えられています。とはいえ湿地は、そこに棲む生き物たちの領域。訪れる時は、"マナー"も忘れずに持参しましょう。


参考文献

仙台市科学館 http://www.kagakukan.sendai-c.ed.jp/
宮城県伊豆沼・内沼サンクチュアリセンター http://www7.ocn.ne.jp/~izunuma/

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