モータースポーツ(四輪)
● 自転車よりも遅かった?!世界初の自動車レース
日本に初めて自動車がやってきたのは1898(明治31)年という説が有力ですが、その頃欧州ではすでに自動車競技が盛んに行われていました。モータースポーツの黎明は、1887年パリの新聞社ル・ベロシペードが企画した自動車レースでした。ドイツのベンツ社が、初めてガソリンエンジンの自動三輪車を完成させたのは前年の1886年、フランスではまだ蒸気自動車しかない頃で、参加希望は1台のみだったためこの催しは流れてしまいます。7年後の1894年、パリのル・プティ・ジュルナル新聞社主催で、パリ〜ルーアン間128qの走行レースが開催されます。これが世界初の自動車レース。申し込みは102台、参加したのは21台で、内訳は蒸気自動車8、ガソリン自動車13でした。レースは、速度のほかに安全性や快適性、経済性が評価され、結果は、ドイツ・ダイムラー社特許の2気筒V型エンジンを載せたプジョーと、パナール・ルバソールが共に価格、総合部門で1位。ガソリン車本家ともいえるベンツは価格で5位、総合で3位でした。ちなみにこの時の最高平均時速は約18.5qと、当時の自転車競技の記録よりも遅かったそうです。
翌1895年、フランスの自動車クラブ(ACF)が設立され、世界初の公式自動車レースが、パリ〜ボルドー間往復1,178qで行われました。優勝は直立2気筒1200tの新型エンジンを搭載したパナール・ルバソール車で、タイムは48時間48分、平均時速は約24qでした。また同年、アメリカにおいてもシカゴで初めての自動車レースが行われています。
● "地球にやさしい"レースも登場!モータースポーツ界の新しい風
1900年、アメリカの新聞社社長ジェームズ・ゴードン・ベネットは、初の国際自動車レースを開催します。1カ国3台ずつの出場、国別に車体を色分けし、参加車の部品はすべて自国製とするこのレースは、現在のF1グランプリのルーツであるといわれています。1901年第2回ゴードン・ベネット杯の優勝車の平均時速は約80km。前述の大会と比較すると、7年間のうちにスピードは3倍以上アップしています。自動車はめざましい技術革新により進化していきますが、速度が上がるにつれて危険性も増し、ついには沿道の観客も巻き込む惨事を引き起こします。そうしてレースは次第に、都市間の公道から専用のサーキットコースで競われるようになっていくのです。
第一次、第二次世界大戦中は中断を余儀なくされたモータースポーツですが、その間も自動車の性能は日進月歩の発展をみせます。終戦後しばらくはアメリカの巨大メーカーが中心となっていましたが、1970年代以降はルノー、マクラーレン、フェラーリといったヨーロッパ勢も復活。また、オイルショック以降は環境問題がクローズアップされ、レースの世界でも燃料制限などが布かれますが、こうした課題を乗り越え、モータースポーツはさらに多くのファンを獲得していきます。近年では、地球環境に配慮した電気自動車のレースやラリー、太陽エネルギーを活用したソーラーカーレースなども大きな注目を浴びています。