ルーツ探訪 2002年
7月

★ トライアスロン


● 泳ぎ、漕ぎ、走る・・・225kmの距離に打ち勝った者にアイアンマンの称号を

 トライアスロンの大会が初めて行われたのは1974年。アメリカ西海岸サンディエゴにある陸上クラブで、レクリエーションを目的に開催されたのが始まりといわれています。スイム(水泳)・バイク(自転車)・ラン(ランニング)の3種目を連続して一度にこなすことから、ラテン語で数字の3を意味するtriaを冠してトライアスロン(TRIATHLON)と名付けられたそうです。
 片や元祖よりもすっかり有名になってしまったのが、ハワイのアイアンマン・トライアスロン選手権。その発祥にはこんなエピソードが伝えられています。『アメリカ海軍のエンジニア、ジョン・コリンズはハワイ勤務になったのをきっかけにさまざまなスポーツイベントに参加していた。そんなある日、マラソン大会の表彰パーティーで「世界で最高の競技能力を持つアスリートは誰か」という議論を始める。「ランナーが一番だ」「いやいや、スイマーさ」と話は一向に収まる気配がない。そこでジョンは「いっそのこと、ハワイ諸島で行われている3つのレースを一度にやって、すべてをクリアした勝者をアイアンマン(鉄人)と呼ぼう」と提案した』というもの。その3種目とはワイキキ・ラフウォーター・スイムの約3.8km、アラウンド・ジ・アイランド・バイク・レースの約180km、ホノルル・マラソンの42.195kmの合わせて225km余り。まさに鉄人並みの体力と精神力が要求されるレースは、1978年2月、わずか15名の参加者を集めて行われました。うち完走者は12名、優勝タイムは11時間46分58秒(現在では8時間前半がレコードタイム)でした。ちなみに件のジョン・コリンズも17時間で完走しています。当初はテレビやスポーツ雑誌で"酔狂のショー"として紹介されることの多かったトライアスロンですが、その魅力が知られるにつれてファンや競技人口が爆発的に増えていきました。



● 一気に認知と人気が高まったトライアスロン。苛酷さが最大の魅力?

 トライアスロン・アイアンマンシリーズの誕生から3年後、鳥取県の皆生温泉で日本初の大会が行われます。1985年、沖縄県宮古島で行われた大会がテレビ放映されるや日本でもあっという間に広まり、現在、潜在層を含めると20万人超の愛好者を数えるまでとなり、毎年150とも200ともいわれる大会が開催されています。
 一方、世界的な人気の高まりを受けて、2000年のシドニーオリンピックに初登場、続いて2004年のアテネでも正式競技として採用されます。国内では2004年埼玉彩の国まごころ国体で、デモンストレーション競技として行われる予定です。
 さて、このトライアスロン、苛酷でつらいといわれる割には、他の競技と比べてその普及がかなり早いようです。自己の能力・気力の限界に挑戦し、ひたすらゴールをめざす求道者のようなトライアスリートたち。一体何が彼らを惹きつけるのか。こればかりはやってみなければわからないようです。



Key Word Column

トライアスロンの種目

 ひとくちにトライアスロンといっても、さまざまな距離のレースが行われています。オリンピックで採用されているのが、スイム1.5km、バイク40km、ラン10kmの計51.5km、「ザ・トライアスロン」と呼ばれるタイプ。現在、世界の各大会の85%以上がこの距離を採用しています。他にも「スプリント」と称されるスイム0.75km、バイク20km、ラン5kmや、すでにご紹介した「アイアンマン」、さらにはスイム4km以上、バイク180km以上、ラン42km以上の「ウルトラ」など、トライアスロンの距離は開催地の地形や運営方法などによって細分化される傾向にあります。
 また、室内プール・エアロバイク・ランニングマシンを利用したインドアトライアスロン、バイクとランのデュアスロン、スイムとランのアクアスロン、ラン・マウンテンバイク・クロスカントリーのウインタートライアスロンなども登場し、それぞれ世界選手権が開かれています。

参考文献

トラスアスロン入門/トライアスロン・ジャパン編集部 編 ランナーズ・ブックス
トライアスロン/サリー・エドワーズ著 徳留信寛ほか監訳 ベースボール・マガジン社
(社)日本トライアスロン連合 www.jtu.or.jpp

←2002年6月号へ [ルーツ探訪]に戻る 2002年8月号へ→