スキー
●紀元前の昔から、多雪地方の交通手段として利用されてきたスキー
2002年2月8日、いよいよソルトレ−クシティー(アメリカ)冬季五輪が開幕します。今回のルーツ探訪は、冬季オリンピックの中心種目"スキー"にスポットを当ててみたいと思います。
そもそもスキーは4000〜5000年前から、雪原の交通や狩りのための道具として使われてきたようです。ノルウェー北部の島では、紀元前2500年前のものと思われる"スキーヤーを描いた岩"が発見されていますし、スウェーデンでは、紀元前2000年頃の遺跡からスキー板が出土しています。古い文献などから、スキーの発祥は中央アジアのアルタイ山脈のあたりではないかといわれていますが、この説は残念ながら憶測の域を出ていません。
氷雪の上を歩く道具として発達していったスキーは、近代に入って格段の進歩を遂げます。その中心となったのがノルディックスキーの古里ノルウェーです。1740年、軍隊にスキー部隊を組織したのをはじめ、1860年には王室がスキー競技の勝者に賞を与えたことで、スピードを競うスポーツとして急速に広まっていきます。1888年にはノルウェーの探検家フリチョフ・ナンセンがスキーでグリーンランドの横断に成功すると、アルプス諸国でもスキーの研究が盛んに行われるようになります。アルペンスキーの誕生です。
20世紀になると、板やブーツ、ストックに工夫や改良が重ねられるとともに、新しいスキー術が生み出され、こんにちのスキーの基礎が確立されます。
●日本のスキー発祥の地は新潟県、父はオーストリアのレルヒ少佐
さて、ここで日本におけるスキーの歴史に目を転じてみましょう。わが国の文献に初めてスキーが登場するのは、文化年間(1804〜1818年)のこと。樺太を探検した間宮林蔵が記した「北蝦夷図説」に、当地の人々がスキーに似た雪具をつけている図が描かれています。明治に入ると、各地でスキーの試乗が行われたようですが、残念なことに見るべき発展はありませんでした。
1902(明治35)年1月、青森歩兵第5連隊約200名が八甲田山雪中行軍の折りに遭難するという痛ましい事件が起こります。この悲劇は全世界に報道されましたが、「もしあの行軍にスキーが使用されていたならば、あれほど多くの犠牲者は出なかったろう」とノルウェーの国王から陸軍省にスキーが贈られたという逸話も残されています。1911(明治44)年、いよいよ本格的にヨーロッパのスキー術が日本へ伝わります。場所は豪雪地として有名な新潟県高田市(現上越市)。オーストリアから来日したテオドル・エドレル・フォン・レルヒ少佐により、陸軍の青年将校らへの熱心な手ほどきが行われ、続いて、広く民間への普及が図られたのです。当時のスキーは、踵の上がるバンデングに長い板、長い一本杖(!) という独特のスタイルでした。それから90余年。今や日本のスキー人口は1200万人とも1500万人ともいわれ、誰もが気軽に楽しめるウインタースポーツとして根強い人気を集めています。