ルーツ探訪
2001年
6月
Q  教えて下さい。

 友だちの結婚式でスピーチを頼まれましたが、 お祝いの席で言ってはいけない言葉があると聞きました。教えてください。 (千葉県 ナオさん)


A  お答えします。

●女神様に祝福されて、6月の花嫁は幸せ。

 ジューンブライドに憧れる気持ちの表れでしょうか、6月の声を聞くと、 結婚式のおよばれの機会が増えるという方も多いようですね。 ところで「6月の花嫁は幸せになれる」という言い伝えは、 何に由来するのかご存知でしたか?
 そもそも6月=JUNEは、古代ローマ神話に出てくる女神ユノ (Juno、英語読みでジュノー)が語源となっています。 ユノは女性を加護し、結婚を司る女神であり、主神ユピテル(ジュピター)、 技術の女神ミネルヴァと並んで、最も崇拝されていた神です。 女性の守護神ユノが祝福してくれる6月に結婚した花嫁は、 幸せになれるというわけです。
 結婚式にまつわる欧米の言い伝えを、もうひとつご紹介しましょう。 挙式当日の花嫁が身につけると、必ず幸せになれるという 「サムシング・フォー」です。4つのサムシングとは、

  • 1.サムシング・ニュー(何か新しいもの)
  • 2.サムシング・オールド(何か古いもの)
  • 3.サムシング・ブルー(何か青いもの)
  • 4.サムシング・バロー(何か借りたもの)
です。晴れやかな日に寄せて、縁起をかつぐ心持ちは、洋の東西を問わないようですね。



●結婚式のスピーチでは、言葉をたいせつに。

 冠婚葬祭の席で縁起が良くないとして避ける言葉を「忌み言葉」といいます。 忌み言葉は、慶事、弔事、そして地域によっても違いがありますが、結婚式の場合、 一般には次のようなものが挙げられます。

・引き裂かれるイメージ
切る、切れる、離れる、別れる、破る、破れる
・安定のなさをイメージさせる
去る、出る、戻る、追う、追われる、帰る、繰り返す、飽きる、退く
・不幸をイメージさせる
滅びる、苦しい、薄い、浅い、嫌う、失う、冷える
・再婚を連想させる
たびたび、重ね重ね、再び、皆々さま
・不吉な音の言葉
四、塩、梨
 忌み言葉はマナーとして心得ておきたいものですが、緊張のあまりうっかり、 ということもあることでしょう。あわてて言い直したりすると かえって目立つ結果になりますから、 そのままスピーチを続けたほうがよいようです。



ことわざdeなるほど
 今回はことわざではなく、古今東西の名言のなかから、幸せな?はたまた厳しい?"結婚の現実"について探ってみましょう。まずはギリシアの哲学者ソクラテスの言葉から・・・「ともかく結婚せよ。もし君がよい妻をうるならば、君は非常に幸福になるだろう。もし君が悪い妻をもつならば君は哲学者になるだろう。そして、それは誰にとってもいいことなのだ」ソクラテスの妻は典型的な悪妻だったとか。「結婚・・・いかなる羅針盤もかつて航路を発見したことがない荒海」(ハイネ/ドイツの詩人)、「結婚は多くの苦痛を持つが、独身生活は喜びを持たない」(サミュエル・ジョンソン/イギリスの詩人)。ふむふむ、人は結婚してはじめて、人生の醍醐味を味わえるのかもしれませんね。そして結婚を長続きさせるコツは・・・「結婚前には両目を大きく開いて見よ。結婚してからは片目を閉じよ」(トーマス・フラー/イギリスの聖職者)。なんといっても寛容さがたいせつです。締めくくりにドイツの小説家、ヘルマン・ヘッセの言葉を・・・「愛されることは幸福ではなく、愛することこそ幸福だ」。結婚式のスピーチに、いかがです?


参考資料
365日の冠婚葬祭とマナー/主婦の友社
名言・名句新辞典(樋口清之監修)/旺文社

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