ルーツ探訪
2001年
4月
Q  教えて下さい。

 4月1日はエイプリル・フール。ウソをついて、人をかついでもいい日とされていますが、いつどこで始まったの?(北海道 浅見さん)


A  お答えします。

●ウソかマコトか?起源の説もいろいろ。

 4月1日はエイプリル・フール・ディ。日本では「四月馬鹿」「万愚節(ばんぐせつ)」ともいわれます。この日、欧米、特にヨーロッパでは、放送局や新聞社といったマスメディアまでが、時に大嘘の報道をするなど、日本では考えられないような悪ふざけが見られます。日本へ伝わってきたのは、大正時代の頃。当時は「不義理の日」といい、普段、付き合いや義理を欠いている失礼をわびる日とされていました。
 エイプリル・フールのルーツについては、いろいろな説が伝えられています。そのひとつが、ノアの箱船を起源とするもの。ノアは洪水がおさまってきた頃を見計らって、陸地を探すためにハトを飛ばします。ハトは一生懸命に陸を探しますが、とうとう見つけられずにノアのもとへ戻ってきます。伝説ではこれが4月1日とされており、無駄なことをさせられる日だというものです。
 一方、フランスでは、エイプリル・フールのことを「4月の魚(ポワソン・ダヴリル)」といいます。一説によると、一年のはじまりが4月1日から1月1日にうつされたシャルル九世の時代、子どもたちは1月1日にお年玉をもらい、4月1日にはごまかしの贈り物をやりとりしたことから始まったとされています。また、4月生まれは魚座ではないことから、「4月の魚=嘘」となったとも、4月になって暖かくなると、魚がいともたやすくたくさん釣れることから由来している、ともいわれています。



●ユニークな嘘で、笑いあえる一日に。

 エイプリル・フールの起源は他にも、キリストがユダに裏切られたのを忘れないように設けられたというもの、一日だけ主人と使用人が入れ替わるという古代ローマの逆さまのお祭りがルーツになった、という異説もあります。
 こうしたヨーロッパ起源説に対して、アジア由来の説もあります。その昔、インドの仏教徒たちは、3月25日から31日までの一週間、座禅を組んで修行をしましたが、つらい修行が終わった4月1日には、悟りの境地から再び迷いの世界に戻ってしまうため、からかいの行事を行うようになったというものです。
 まさに諸説うずまくエイプリル・フールの起源。でも、洋の東西を問わず、ウソをついてもよい日ということには違いがないようですね。嘘は嘘でも、あとで笑えるユニークなもの、悪気のない嘘にとどめておきたいものです。




ことわざdeなるほど
 嘘にまつわることわざには、強い戒めを含むものが多く見受けられます。「嘘をつくとえんま様に舌をぬかれる」これは嘘をつくと、死んでから地獄に落ちてえんま大王に舌を抜き取られるから、決して嘘をついてはいけないというもの。「嘘つきは泥棒の始まり」は、嘘をつくものは、その嘘がきっかけとなり、いずれ盗みをはたらくようになるという意味。イギリスやドイツ、ブルガリア、エストニアなどで、ほとんど同じ意味の格言があります。「嘘と坊主の頭はゆったことがない」とは、これまで嘘をついたことがないということを面白く強調した言い方。嘘を「言う」と、髪を「結う」を掛けた洒落になっています。
 一方、ウソを肯定的にとらえているのが「ウソも方便」。相手が真実に耐えられなかったり、平静に聞くことができない状況では、時に嘘が必要なこともあります。もちろん「方便」の嘘も、たくさん使うと本物になってしまいますが。
さて、エイプリル・フール。出まかせで言ったことが、本当になってしまう「嘘から出た誠」に、くれぐれもご用心。


参考資料
歳時記考/岩波書店
生活の雑学大事典/主婦と生活社
岩波ことわざ辞典/岩波書店


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